会長のごあいさつ

日本結晶成長学会第14代会長

宇田 聡

東北大学金属材料研究所

 2019 年4 月1 日に日本結晶成長学会の会長を仰せつかりました東北大学金属材料研究所の宇田聡です。

 日本結晶成長学会は2019 年に創立45周年を迎え、この期間に様々な分野から多くの方々が本学会に所属され活躍されてきました。結晶成長学は、規則的な原子配列を伴いながら生まれる結晶とその母相との関連性を明らかにし、結晶が本来持つ特性を有効に引き出す学問です。結晶成長学が関わる世界は大変に広く、数学、物理学、化学などの純粋理学から金属学、化学工学、応用物理学、電気電子工学、機械工学などの材料工学全般に渡ります。更に昨今では薬学や医学の分野においても結晶や結晶成長メカニズムの解明により別視点からのヒントが得られる学問として結晶成長学は期待されています。一方、産業界ではデバイスやシステムの要求に応える特性を発現するための結晶材料の設計から始まり、材料合成、特性評価、結晶育成、結晶評価、結晶大型化など結晶材料の設計から実用までの一連のプロセスを扱います。更に結晶特性とデバイス機能の関係を理解することにより結晶育成に留まらずデバイスやシステムの開発までを扱えることも結晶成長学の特徴でしょう。その典型例が本学会名誉会員の赤﨑勇先生、会員の天野浩先生の2014年の青色発光ダイオードの開発によるノーベル物理学賞の受賞と言えましょう。このように結晶成長学は、材料設計からデバイス応用までを連続して扱うことができ、今後も大きな発展を見込める魅力的な学問であると言えます。

 社会貢献を意識した研究はもちろん重要ですが、何よりもまず新発見や未知の問題を解決することに面白さを感じることが結晶成長学における研究の基本と考えます。そのためには、研究内容や研究手法に多様性が存在することが肝要でありましょう。学会の存在はややもすれば他分野との間に自ら境界線を引いてしまうことがあります。凝固というテーマは他学会でも議論が活発に行われていますが必ずしも本学会との交流は盛んではありません。同様な事情は他のテーマに関しても散見されます。しかし、一方で結晶成長学会誌の記事や各分科会の活動から知るようにこうした境界を取り払いながら関連テーマあるいは新規テーマに関して活発な議論が展開されていることも事実です。つまり、結晶成長学会誌の特集テーマで異なる学会で面白い研究をされている方々から記事を募ること、結晶成長国内会議や分科会講演会で異種の学問領域を横断するシンポジウムの企画を立てること、これらにより分野間で総合的理解が深まるだけでなく、共同研究によるプロジェクトが発足するなど結晶成長学に多様性が見られる事例が次々に出てきています。核となるテーマに対して異分野の研究者が自然発生的に集い研究を展開していくことはこれからの結晶成長学会が発展していくための一つの姿でありましょう。

 世の動向をしっかりと意識した社会還元の研究は大事ではあり、所属を問わず多くの研究者が十分に認識するところです。一方、アカデミアでも産業界でも閉塞感を感じる昨今、研究に面白さを感じることの大切さを再度認識してみることも必要と考えます。研究の面白さに端を発し、応用研究につながる道が自然に生まれ、さらに産業界にも続くような研究が生まれていく、それが理想と考えます。そこでいかに本学会に多様性を持たせるかというのが私の会長としての役目と考えます。どうか会員の皆様からの忌憚のないご意見やご提言をいただきますようお願いいたします。

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