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2018年 日本結晶成長学会賞受賞者 紹介
第13回業績賞および赤﨑 勇賞・第35回論文賞・第25回技術賞・第16回奨励賞

第13回業績賞および赤﨑 勇賞

受賞者
干川 圭吾
干川 圭吾 Keigo Hoshikawa
 信州大学 名誉教授
 Professor Emeritus, Shinshu University
受賞題目
「機能性バルク単結晶育成技術の開拓と実用化」
Development and Practical Use of Functional Bulk Single Crystals and Their Growth Techniques
受賞理由
 単結晶の大形化・高品質化・低価格化に向けた研究と実用化に尽力した.
Si結晶では,結晶特性・品質に密接に関わるCZ-Si中酸素について,「酸素の混入機構」を先駆的に解明し,効果的な「酸素濃度制御技術」を提案・確立した.高精密に濃度制御された現在のSiウエハはこれらの知見,技術基盤に立脚している.Si育成への「磁界印加効果」に早期に着目し,「水冷コイルによる垂直磁界」,「超電導コイルによるカスプ磁界」等,新規技術を順次提案し,磁界印加技術の進展を牽引した.これらの知見・技術は,現在の300mm径Siの全てが,磁界印加の下で生産されている現実に大きく寄与している.
GaAs結晶では,大形化,低転位密度化,高歩留まり育成を可能にする独創的な「液体封止垂直ブリッジマン(LEVB)技術」を提案・確立した.InP育成で大きな課題であった双晶発生,多結晶化を解決する「定径種子付け法」を提案・実証した.これら先導的研究成果は,国内の企業に継承され,生産技術へと進展した.現在国内外のGaAs,InPの大部分が,これらの技術により生産・販売されている.
酸化物結晶では,従来困難視されていたるつぼ内成長(VB)技術に挑戦し,常識に反して多くの結晶で,工業化レベル(サイズ・品質)の単結晶育成が可能なことを示した.VB法サファイア,α-Al2O3-YAG共晶体,β-Ga2O3等があり,現在企業で検討継続のものも多く,実用化への進展が期待される.
さらに受賞者は,種々の単結晶づくりに関わる中で,ノウハウの塊とも言われる泥臭いバルク成長の現場で,垣間見られる規則性を逃さず科学的知見として捉え,一般化し,活用することで,結晶成長の科学・技術の進展にも大きく貢献してきた.
以上のことから,受賞者の業績は,本会業績賞および赤ア勇賞にふさわしいと判断した.

第35回論文賞

受賞者
柚山 健一
杉山 輝樹
杉山 輝樹 Teruki Sugiyama
 台湾国立交通大学 副教授
 奈良先端科学技術大学院大学 客員教授
 Associate Professor, National Chiao Tung University
 Adjunct Professor, Nara Institute of Science and
 Technology
柚山 健一 Ken-ichi Yuyama
 北海道大学電子科学研究所 助教
 Assistant Professor, Hokkaido University
受賞題目
「光圧によるアミノ酸、タンパク質の結晶成長制御」
Control of Amino Acid and Protein Crystallization by Optical Trapping
受賞対象論文
1) Laser Trapping chemistry: From polymer assembly to amino acid crystallization, T. Sugiyama, K. Yuyama, and H. Masuhara, Accounts of Chemical Research 45(11), 1946-1954(2012).
2) Two-dimensional growth rate control of L-phenylalanine crystal by laser trapping in unsaturated aqueous solution, K. Yuyama, J. George, K. G. Thomas, T. Sugiyama, and H. Masuhara, Accounts of Chemical Research 45(11), 1946-1954(2012).
3) Crystallization in unsaturated glycine/D2O solution achieved by irradiating a focused continuous wave near infrared laser, T, Rungsimanon, K. Yuyama, T. Sugiyama, and H. Masuhara, Crystal Growth & Design 10(11), 4686-4688(2010).
4) Selective fabrication of α-and γ-polymorphs of glycine by intense polarized continuous wave laser beams, K. Yuyama, Thitiporn Rungsimanon, T. Sugiyama, and Ho. Masuhara, Crystal Growth & Design 12(5), 2427-2434(2012).
5) Rapid localized crystallization of lysozyme by laser trapping, K. Yuyama, K.-D. Chang, J.-R. Tu, H. Masuhara, and T. Sugiyama, Physical Chemistry Chemical Physics, 20, 6034-6039(2018).
6) Dynamics and mechanism of laser trapping-induced crystal growth of hen egg white lysozyme, H.-R. Tu, K. Yuyama, H. Masuhara, and T. Sugiyama, Crystal Growth & Design 15(10), 4760-4767(2015).
受賞理由
 杉山輝樹会員と柚山健一会員は,近赤外レーザービームをアミノ酸やタンパク質溶液に集光し,分子・クラスターを局所的に濃縮することにより結晶化を誘起する全く新しい手法「光圧捕捉結晶化」を世界に先駆けて開発した.本手法は,集光レーザービームの力学的作用(光圧)を利用しており,分子の光吸収過程を含まない非反応,非破壊,非接触プロセスでの結晶化を可能にした.これらは,これまで提案されてきた光誘起結晶化とは一線を画す特徴である.結晶化は,任意の時間に集光点から誘起され,その時空間制御分解能は,空間的には波長オーダー,時間的にはビデオフレームの分解能である.さらに,溶液条件を変える通常法に比べ,結晶化効率と結晶成長速度を数十倍以上向上させることが可能である.杉山会員と柚山会員らは,本手法特有の結晶化メカニズムとして,結晶前駆体である巨大高濃度クラスター領域の形成を提案・実証するとともに,光圧による局所濃縮や偏光に依存した分子配列などを制御して,不飽和溶液からの結晶化並びに多形制御にも成功した.さらに本手法をタンパク質へと展開し,リゾチーム結晶化の時空間制御,結晶成長速度の制御にも成功するなど,これまで本手法による結晶成長の研究領域を世界的に牽引してきた.本研究成果は,全く新しい結晶成長制御法を示したことはもちろん,物理,化学,生物などの分野横断的な今後の結晶成長学の技術発展にも大きく寄与する事が期待できる.以上の理由から,本会論文賞にふさわしいと判断した.

第25回技術賞

大橋 雄二
横田 有為

鎌田 圭
吉川 彰

井上 憲司
庄子 育宏
受賞者
横田 有為 Yuui Yokota
 東北大学 准教授
 Associate Professor, Tohoku University
大橋 雄二 Yuji Ohashi
 東北大学 准教授
 Associate Professor, Tohoku University
吉川 彰 Akira Yoshikawa
 東北大学 教授
 Professor, Tohoku University
鎌田 圭 Kei Kamada
 株式会社 C&A
 C&A Corporation
庄子 育宏 Yasuhiro Shoji
 株式会社 C&A
 C&A Corporation
井上 憲司 Kenji Inoue
 株式会社 Piezo Studio
 Piezo Studio Inc.
受賞題目
「新規ランガサイト型圧電結晶の製造技術とデバイス技術の開発」
Development of Growth and Device Techniques of Novel Langasite-Type Piezoelectric Single Crystals
受賞理由
 ランガサイト型単結晶は長い間,圧電素子としての研究が行われてきた材料であるが,横田・吉川氏らはマイクロ引下げ法を用いて新規ランガサイト型圧電結晶Ca3M(Ga,Al)3Si2O14 [M=Ta;CTGAS,M=Nb;CNGAS]やCa3Ta(Ga,Sc)3Si2O14の単結晶育成に成功し,高い周波数温度安定性や水晶よりも低いインピーダンスを達成した.また,大橋氏はこれらの単結晶における材料定数のAl(Sc)置換量依存性や最適カット角を明らかにした.CTGAS単結晶の大口径化は鎌田・吉川氏らが設立した大学発ベンチャー・海&Aにおいて庄子・鎌田・吉川氏が担当し,チョクラルスキー法による2インチ径CTGAS単結晶の成長条件を見出した.井上・大橋・吉川氏らは当該結晶のデバイス化を企図した大学発ベンチャー・咳iezo Studioを設立し,振動子,フィルタ,センサ等の圧電素子開発に取組んだ.井上氏はスプリアスを抑制した振動子の開発に成功し,当該デバイスを実用レベルに引き上げた.これら材料開発から大口径化,デバイス化までの一連の取り組みが実を結び,CTGAS振動子は水晶振動子に比べて1/7以下のインピーダンス,1/10以下の起動時間,5倍以上の帯域幅を達成した.水晶振動子では不可能な低周波・小型・高速起動・低消費電力化を同時に実現できることが明らかとなり,大手の電機・自動車機器メーカー複数社と取引を開始するに至った.CTGAS振動子が用いられるタイミングデバイス市場は5,000億円とされており,大手企業との取引開始を受けて東北大学ベンチャーパートナーズは咳iezo Studioへの出資を実行した.以上の成果により,候補者の新規ランガサイト型圧電結晶に関する開発・活動・成果は日本結晶成長学会技術賞に相応しいと判断した.

第16回奨励賞

該当者なし